「週に数回スクールに通っているのに、一向に上達の兆しが見えない」 「何度も同じアドバイスをしているのに、試合になると全く実行できない」
小学校4年・5年頃になると、練習量や試合経験の差が目に見えて広がり、「このまま続けていて意味があるのか」と不安を感じる親御さんは少なくありません。
しかし、いくら練習しても成果が停滞する時期や、知識が動作に結びつかない状態は、ジュニア選手の成長過程において頻繁に起こる現象です。
この記事では、ジュニアテニスで「上手くならない」と感じる構造的な理由を整理し、親が陥りやすい「逆効果な関わり方」と、着実にステップアップするために必要なサポートを、実体験に基づいてまとめました。
「今は停滞しているけれど、論理的に状況を改善したい」 そんな方の判断材料として活用いただければ幸いです。
ジュニアテニスでいくら練習しても上手くならない3つの原因
「練習量はこなしているのに結果が出ない」 「教わった内容を理解しているはずなのに、体現できない」 この停滞状態には、個人の才能以前に、ジュニアテニス特有の構造的な原因が潜んでいます。
1. 課題設定と技術レベルの乖離(かいり)
多くの場合、今の子供の習熟度に対して「難易度が高すぎる課題」が与えられています。
・基盤となるフォームが固まる前に、応用的なショットを練習する
・正確なインパクトより先に、スピードやパワーを求められる
・戦術を理解する前に、細かな配球の修正を指示される
このように優先順位が整理されていない状態で練習を重ねても、子供の脳内では「何を意識すべきか」が定まりません。結果として、練習では形になっても、余裕のない試合になると再現できないという現象が起こります。
長男の場合は、簡単な球出しのショットを打つ際に面が安定せず、ボールが下や上に飛んで行ってしまいます。まずは、面が安定しボールをコントロールをすることころから始めないといけないのに、スクールでは強度の高いメニューや難しいメニューをこなしています。ここがミスマッチであると考えています。その為、親子練習の時には本人のスキルに合った練習メニューを行うことが必要となってきます。
2. 多すぎるアドバイスによる「情報の飽和」
コーチ、保護者、動画サイトなど、現代のジュニアは過剰な情報に晒されています。
・「打点を前に」
・「膝を曲げて」
・「ラケットを振り切って」
個々のアドバイスは正しくても、人間が同時に意識できるポイントには限界があります。 情報が多すぎると、子供は「失敗しないこと」に意識を奪われ、運動の流動性が失われます。アドバイスに忠実であろうとするほど、動作が硬くなり反応が遅れるのは、脳の処理能力がオーバーフローしているサインです。
今日は、「スタンスの幅に気をつける」「ボールを前で打つ」など、1日1つのことにフォーカスして取り組んでいくことが近道になります。我が家では、スクール前に本人と今日のポイントを話してから行かせています。
3. 発達段階に伴うメンタルと動作への影響
小4〜小5頃は、他者との比較や勝敗を客観的に認識し始める時期です。
・「負けたくない」という過度な執着
・「ミスをしたら叱られる」という不安
・「親の期待に応えなければならない」というプレッシャー
これらの心理的負荷は、普段無意識に行っているスムーズな動作を「意識的なぎこちない動き」に変えてしまいます。練習と試合のパフォーマンスに大きな差がある場合、それは技術の問題ではなく、心理的要因による身体の硬直である可能性が高いと言えます。

結論:「できない」は「能力不足」の証明ではない
保護者が認識しておくべきは、「できない=理解していない、または能力が低い」という短絡的な評価は誤りであるということです。
1.理解はしているが、神経系や身体操作が追いついていない
2.情報の優先順位が整理できず、混乱している
3.外部環境(プレッシャー)が、本来の動作を阻害している
この「脳と体のズレ」は、ジュニア選手の成長過程において避けられないプロセスです。この停滞期を「能力の限界」と捉えるのではなく、「情報を整理し、課題を絞り込むための冷却期間」と定義し直すことが、次のステップへ進むための現実的なアプローチとなります。
上手くならないと感じる時期に、親ができる3つのこと
ジュニアテニスで停滞期に直面した際、保護者は「練習量を増やす」「環境を変える」といった追加の刺激を与えようとしがちです。
しかし、この時期に真に必要なのは「刺激を増やすこと」ではなく、「情報を整理すること」です。現状を打破するために有効な3つのアプローチをまとめました。
1. 課題を「ひとつ」に絞り込む
上達が停滞しているときほど、修正すべき点は多く見えます。しかし、子供が一度に意識できるポイントには限界があります。
・フォームの修正
・フットワークの強化
・配球(コース)の打ち分け
これらを同時に求めると、脳の処理が追いつかず、結果としてすべての動作が中途半端になります。 保護者ができるのは、「今日のテーマはこれだけでいい」と課題を極限までシンプルにすることです。意識するポイントを一点に絞ることで、動作の迷いが消え、パフォーマンスの安定に繋がります。
2. 改善点ではなく「到達点」を言語化する
結果が出ない時期は、どうしてもミスや欠点ばかりが目につきます。しかし、停滞期こそ「できていること」を客観的に指摘する必要があります。
・ラリーの回数が前回より増えた
・劣勢でもプレーを投げ出さなかった
・特定のショットの打点が安定してきた
こうした小さな変化や事実を保護者が先に言葉にすることが重要です。自分の取り組みが正しく認識されているという「心理的安全性」があって初めて、子供は次の技術的挑戦への意欲を維持できます。
3. 成長の「非線形性」を理解する
最も重要なのは、保護者自身がジュニア選手の成長曲線を正しく理解することです。技術の習得は右肩上がりに進むわけではなく、必ず以下の段階を挟みます。
・新しい技術を試す過程で、一時的にフォームが崩れる
・練習と結果が結びつかない停滞期が続く
・自信を喪失し、パフォーマンスが低下する
これらは次の段階へ進むための必要なプロセス(準備期間)です。保護者が焦りを見せると、その緊張感は子供に伝わり、さらなる動作の硬化を招きます。「今はそういう時期である」と冷静に受け止める姿勢が、子供のメンタルを安定させる要因となります。
結論:保護者の役割は「交通整理」
停滞期において、無理に結果を追い求める必要はありません。
1.課題を最小限に絞る
2.事実ベースで変化を認める
3・長期的な視点で静観する
この3点に徹することで、情報の過負荷が解消され、子供は再び自分の力で技術を積み上げていくことが可能になります。

まとめ|「上手くならない時期」は、次の飛躍への構造的プロセス
ジュニアテニスにおいて、練習量に対して成果が見えない、あるいはアドバイスが動作に結びつかないという状況は、決して特殊な事例ではありません。これは個人の才能や意欲の問題ではなく、多くの選手が必ず直面する「成長の構造的プロセス」です。
停滞が生じるメカニズム
外見上「伸び悩んでいる」ように見える背景には、主に3つの要因が潜んでいます。
・習熟度と課題の乖離:基礎が未完成な状態で、難易度の高い応用を求めている。
・情報のオーバーフロー:多すぎる助言が脳内を混乱させ、動作の自動化を妨げている。
・心理的バイアス:勝敗や周囲の評価を意識しすぎることで、身体に硬直が生じている。
これらが複雑に絡み合うことで、本来持っている力が出し切れない状態に陥っているに過ぎません。
保護者が取るべき「3つ」の具体的アプローチ
現状を打破するために必要なのは、刺激を増やすことではなく、情報の交通整理です。
1.課題の単一化:修正ポイントを「たった一つ」に絞り込み、子供の脳内のリソースを集中させる。
2.事実ベースの肯定:ミスへの叱責ではなく、「前回より打点が高い」「最後まで走った」といった客観的な事実を言語化し、心理的安全性を確保する。
3.停滞期の再定義:親自身が「今は技術を整理し、定着させるための熟成期間である」と論理的に捉え、焦りを子供に伝播させない。
最後に
テニスの技術習得は、決して右肩上がりの直線で進むものではありません。停滞や一時的な後退を経て、ある時急激に繋がるという「非線形な成長」を辿ります。
もし今、周囲との差に不安を感じているのであれば、それは多くの家庭が通ってきた道でもあります。結果を急がず、現在の課題をシンプルに積み重ねていくことこそが、結果として最も早く次のステップへ到達する近道となります。

